盲蛇に怖じず

さて、痩せ狐、変じて、合宿所のぐにゃぐにゃ犬、入部後11月には、京都段別で3位入賞、即日昇段、晴れて黒帯になった。その盾と京都新聞の切り抜きはひそかにうれし大事で、多分今もどっかにあるはず。ほんで暮れに、試合か合宿について行って、帰りにこぞって東京の講道館に練習に行った。ちょうど全日本の強化選手たちも合宿中で、講道館には東京の柔道家たちが集まっていた、まわりは、というと、相撲取りみたいな巨漢だらけ、目の高さに帯があり、足は胴より太く素早く動く、というレベル、その中にうずもれていたら、捨て稽古がはじまった、誰か弱そうな人に投げてもらおうと思ったら、ちょうど、ちっこいやさしそうな人がポツンと空いており(なぜかまわりの相撲取りたちは敬遠してた)、これはラッキーと、のこのこ組んだら・・え、鉄球みたい、と思う間もなく、すさまじいいきおいで投げられて(たぶん背負い)、アメーバのように畳にとけそうになった、ベチャぐちゃというかんじ、そのちっこいけど鉄球みたいな人、首傾げながら、うん? という感じで、どこのやつだろーと、犬の新しい黒帯かなんかをみて、「オー、◯大、きてたのか?」と喜び、「こじま先生はお元気か?」とかニコニコしながら言うではないか、それでもういいよ、となった、とたんに、相撲取りたちが鉄球を取り囲み、次をお願いしてた、その巨漢たちの目の高さの帯には「東洋大学」とあった(やせ犬に先を越されて恥ずかしく思ったのだろうか)、それで、アメーバ犬はというと、別になんも考えてなかった・・・が、その状景を丁度、古内治が2階かなんかから見ており(彼は160センチ75キロのミニ遠藤みたいな体形、頭は珍念、緑色のジャージで上半身裸、胸毛なびかせ丸太みたいな腕と短い足で自転車乗ってた、とにかく酒飲ますと意識がとんだりして愉快な男だった、多分今は、ゆるぶりんなーな頭だろう)、実業団との練習試合で、ろっこつかなんかを痛めてた時だと思う、練習後あぜんとした顔で「おまえ、あれ誰か知っとんのか?」と聞くから「知らん」というと、「あれは藤猪省三ぞ!」と目まんまるに言う・・犬は、そんな人知らんから、「へ、誰?」てなもんで、「おまえらは、ええのー」といわれた・・・、あとでわかったが、あの鉄球、世界選手権4連覇とかで、古内みたいな柔道少年には神様みたいな存在、捨て稽古にもいけません(そら相撲取りたちも敬遠するわ)、合宿犬は、そんなこと知らんから平気、という意味で「おまえらはええのー」となったわけ・・・当時、白帯組は、平、牧、深谷とかいっぱいいたから「おまえら」と{ら」がつくわけ・・・・これがほんとの「盲蛇に怖じず」の物語でした、めでたし、めでたし。

 

PAGETOP